参拝の作法
気持ち(キモチ)は形(カタチ)に顕れる

型(カタ)を整え、気持ちを込めたもの。それが、形(カタチ)です。
作法を知り、型を整えれば、形となり、神への祈りはより一層伝わるものとなります。
「チ」とは、「地」「血」「乳」。
作物の成長に、人の身体に、そして赤ちゃんの成長に、力(チカラ)を与えてくれるもの。
命(イノチ)の根源、力の源こそが「チ」なのです。
作法とは形にすること。気持ちのこもったお詣りになると良いですね。
お参りの作法
まず神社に到着したら、参道を探しましょう。大きな神社では表参道、北参道、西参道などいくつも存在する場合がありますが、 正式には表参道からお詣りするのがよいでしょう。

ほとんどの神社は現在のような車社会となる以前からお祀りされている為、
「車で神社に来て参拝する」ということを想定せず、境内の参道・手水舎・社殿などが配置されていることが多いようです。
当社も車両の進入口は神社裏門からとなっており、境内駐車場は御社殿のすぐ真横という配置です。
足がご不自由な場合やお急ぎの時はそのまま社殿に進んでお詣りされたらよろしいかと思います。
お時間や条件が許すならば、一旦表参道の鳥居まで移動して、
表参道の鳥居をくぐって手水舎にて手水をとり、お詣りすると大変丁寧です。
鳥居をくぐる
鳥居をくぐる時には、会釈程度の浅い礼をして鳥居をくぐります。
さて、ここで問題です。
参道のどの位置を、どちらの足から鳥居をくぐるでしょうか?
我々神職の作法に則って正解とするならば、
神様に向かって参道の左端を通り、左足から歩を進めます。
これは、境内の位置関係には上下(かみしも)の定めがあり、進むときは下(シモ)から、
下がるときは上(カミ)からという決まりがあるからです。(状況に応じてこの限りではありません)
前後の位置関係では、神様(本殿)に近い方が上座(かみざ)、
遠い方が下座(しもざ)。
左右の位置関係では、真ん中を「正中(せいちゅう)」と呼び、
一番の上座。正中に近い方を上座、遠い方を下座。
正中からの距離が同じ場合は、神様(本殿)に向かって右が上座、
左が下座と定めてあります。
図はこの上下の位置関係を表したものですので、少々判りにくい図となってしまいましたがご覧下さい。
手水をとる
鳥居をくぐったら、次に手水舎(鳥居の近くにございます)にて手と口を清め、
普段の生活で体にたまってきた罪や穢れを洗い落とします。
昔から清らかな水は穢(けがれ)を流すとされ、手水は禊(みそぎ)を簡略化したものです。
①柄杓を右手で取り、まず左手をすすぐ。
②柄杓を左手に持ちかえて、次に右手を清める。
③柄杓を右手に持ちかえて、左の手のひらに水をとり、その水で口をすすぐ。
④最後にもう一度、左手を清める。
これは、きれいな体にて神前に立ち参拝するために行うものです。
日常(の生活、ケ(褻))から、非日常(な神へのお詣り、ハレ(晴))
への切り替わりを
意識されながら、手水をお取りになると、よろしいかと思います。
少し余談ですが、なにか特別な日に身につける着物の事を現在でも「晴着(ハレギ)」
と言います。
晴着(ハレギ)に対して、日常の生活で身につける普段着や労働着のことを
「褻着(ケギ)」と言います。また、褻稲(ケシネ)とは、日常の雑穀混じりの主食のことを
指します。
参道をすすむ
手水舎からゆっくりと石畳の左端をすすみます。
参道の下座(しもざ)を控えめに歩み、歩を進めながら清浄で落ち着いた気持ちに
切り替えていく。日本人らしい自然(神)との調和です。
参道の途中にも鳥居がある神社の場合は、鳥居をくぐるときに一旦立ち止まり、軽く一礼して進みます。
お詣りする
お賽銭箱の前に着いたら、「いまからお詣りさせていただきます」という意味で、
会釈程度の浅い礼をします。
次に、神様への御供えとしてお賽銭を賽銭箱に入れて、参拝します。
鈴のある神社では、賽銭を供える前に鈴を鳴らしましょう。
この鈴は、一般住宅の呼び鈴と同じ意味です。賽銭の金額はお気持ちでどうぞお供え下さい。
お賽銭をお供えしたら、いよいよ神様に正式に拝礼します。気持ちを鎮め、姿勢を正して、
「二拝二拍手一拝(にはい にはくしゅ いっぱい)」の作法でお参りします。
(神社によっては拝や拍手の数が違う場合があります)
①まず二回深くおじぎをする。(背中が水平になるくらい)
②次に胸の前で両手を合わせ、肩幅ほどに両手を開いて二回拍手をする。
③最後のもう一回深く頭をおじぎをする。
以前、有名某先生が
「私はいつも1505円お賽銭を入れる。御縁が頂けるように願掛けと、
お賽銭が入ったときの清々しい音を聞くために、硬貨で505円。
喫茶店のコーヒーより安くては申し訳ないので、1000円札を入れるんだ。」
と言っておられたのを聞いたことがあります。
うーむ。なるほど。と思いましたが、
私の個人的な感覚で申し上げれば、毎回1505円お賽銭を上げるのはちょっとツラいかも…
境内社や遙拝所を巡拝する
まずは、その神社の神様がお鎮まりになる本殿をお詣りしたら、
続いて境内にお祀りされている境内社や遙拝所をお詣りしましょう。
境内社は小さいながらも本殿があり神様がお鎮まりになっている社です。
当社では鳥居の横にある稲荷神社が境内社です。
遙拝所は、文字通り「遙かに拝む」ところです。
当社には安芸国の一之宮である厳島神社の遙拝所、日本全体の総氏神である
伊勢神宮の遙拝所、台所やかまど等の火之神である三宝荒神遙拝所の3箇所の遙拝所があります。
お参りの作法は全て一緒です。
御参拝のマナー
神社を訪れたら、まずは神様にお詣りしましょう。
ご本殿にいらっしゃる神様へのご挨拶を済ませてから、境内社や遙拝所の巡拝や、お守りや御朱印をいただくと良いですね。
ただし、御朱印は神社によっては先に受付する方がスムーズな場合も有りますので、各神社にてご確認下さい。
さいごに
神社の境内は、日常(ケ)と非日常(ハレ)の境界線です。
境内地に一歩足を踏み入れたとき、手水をとったとき、参道を歩むとき、
一つずつその境界を越えていきます。
そしてその境界を一つ越える度に、心身の穢れが一つずつ剥がされていくのです。
作法を知り、型(かた)を整え、形(かたち)となれば、神への祈りはより一層伝わるものとなります。
皆様のご参拝が、より清々しい参拝となりますことの一助となれば幸いです。